【第三章 一か月後の校舎】

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死後、一か月経ってから 幽霊となって帰ってきた理由の仮説が なんとなく立ったわたしは ひとまず家に帰ろうとした。 先生が戸締りを始めだして 教室に閉じ込められそうだったから というのも少しある。 お腹も特に減らないし、 疲労もまったく感じていないけれど、 自分自身が幽霊とは 言え人気のない学校は少し、怖い。 昇降口の自分の下駄箱は 空っぽだった。 どうしたものかと足元を見ると 最初からローファーを 履いていた事に気づく。 「おかしいなあ?」 そうは思うものの、 幽霊として生き返っておきながら 履いている靴が おかしいも何もないだろうと思いなおす事にした。 そもそも足があること自体が奇跡と言っていい。 幽霊の特長といったら第一がそれのはずなんだから。 校庭の土を踏み、校門へと向かう。 最終下校時刻をとっくに過ぎていた為、 門はしっかりと閉じられていた。 それでも越えられる手段がないわけではない。 門柱に手をかけ、よじ登り、 一気に市道に飛び降りようとするが、 「ど、どうして?」 ばちっと強い静電気のようなものに 弾かれて叶わなかった。 その衝撃でどしんと校庭側に尻餅をつく。   何度、挑戦しても結果は同じだった。
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