【第三章 一か月後の校舎】

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「もしかして、わたし、学校から出られないの?」 校門だけでなく先生の出入り用に 使われている駐車場に面した裏門や 自転車置き場近くの 緩んだフェンスから抜け出そうとしたが、 どこもかしこも 静電気のような衝撃に阻まれてしまう。 職員室からも電気が完全に消えて、 駐車場も空っぽになってしまう頃に なってようやく踏ん切りがついた。 「そっか、わたし家に帰れないんだ……」 両親がこちらへ赴かない限り、 会うことは不可能ということだ。 そして死んでしまった娘が 通っていた学校に 親が出向くことなどあるのだろうか。 それはすごく悲しいことのはずなのに 今日一日で色々なことがありすぎて、 すとんと心の端に綺麗に着地してしまった。
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