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「でも、わたし誰に殺されたの?」
ずるずるとその場に座り込む。
トイレの床が
汚いなんてことはどうでもよかった。
どうせ鏡に映らない幽霊なんだから
トイレの汚れも
わたしのスカートには付着できないだろう。
「誰かにそこまで恨みをかっていたとは思えない……」
十六年のわたしの人生は
ただ流されるままだった。
間違っても
班長や学級委員などの
目立つ役柄にはつかないその他大勢の一部。
サスペンスドラマに出演しても
最初に殺される役などではなく、
冒頭で主人公がすれちがった
名もないエキストラの一人、といった所。
受験で第一志望を
県立の緑花高校にしたのも
友達の大多数の進学先だったし、
両親が緑花高校と葉桜高校だと
出来れば緑花高校に行ってくれた方が
経済的に嬉しいといっていたからだ。
個人的な思い入れは
特にまったくなかった。
だから受験勉強に
身が入らずに落ちたんだろうけど。
「こんなわたしを誰が殺すの?」
空を仰ぎ見る。
そこに答えはなくて、
大きな染みが広がった
古ぼけた天井があるだけだった。
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