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今、わたしがいる場所は
最高に混む場所だ。
押し合いへし合いされる前に
早く出よう。
そう思って足を踏み出すも、
後から後から人が入ってきて
避けようとしてバランスを崩す。
ついにピンク色のベストを
着た生徒にぶつかってしまって、
咄嗟的に謝る。
「あ、ごめんなさ……」
謝罪は尻切れとんぼになった。
突き出した私の腕が
彼女の腹部を通過しているのを
見てしまったせいだ。
パソコンで作った
合成写真みたいな気味の悪い光景だった。
さらに恐ろしかったのは、
腹部を貫かれている彼女が
まったく反応していない事だ。
わたしの謝罪も
わたしの腕も
意に介す事なく隣の友達と、
今晩のテレビ番組について熱心に話し合っている。
「――っ。やめてよ! こんなのはもうやめてよ!」
わたしは一心不乱にトイレを抜け出した。
そしてそのまま
人気のない屋上へ続く階段の踊り場へと逃げ込む。
トイレにも廊下にも
かなりの人がいたけれど、
わたしは誰にもぶつかる事はなかった。
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