先ず始めに……

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 そう言って子供達は、辺りに散らばる落ち葉をかき集める。彼等はうずくまるベラの頭上に、それを次から次へと振りかけて行った。 「…………。」  強い風が子供達のたてる笑い声を、攫うように吹きつけて来る。  その風が黄金に色づく銀杏の枝葉を揺らし、丘一帯にさやさやと言う衣擦れの様な音を響かせていた。 「――ない……。」  風が梢を叩くその渇いた音に混じって、どこからか低い唸り声のようなものが運ばれて来る。 「――っけんじゃない……!」  唸りとも呻きともつかないその音の出所に気付き、子供達は囃し立てる声と動きをぴたりと止めた。
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