26人が本棚に入れています
本棚に追加
嫉風は手に日本刀をもっていた。
町でも有数の大きなショッピングセンターの中で、
血で紅く濡れた日本刀を。
買い物客や、ショッピングセンター内のゲームセンター目当ての子供達。それら全てが恐怖で言葉を失って、体に力が入らず、その場に立ち尽くすだけだった。
足下には長年一緒にいた親友が血溜りの中で、腹部を押さえながら嫉風を見つめる。
その目は嫉風に
「なぜ?」と問いかける。
「惚けるなよ」
嫉風は親友だった「人」の顔を踏みつける。
踏みつける。
踏んで、踏んで、踏んだ。
怒りに身を任せ次第に力を込めながら、字の如く踏み潰した。
動かなくなった「人」を蹴りとばし、明日で付き合って一年目を迎える彼女のもとへ向かう。
一歩
この場の空気が体を硬直させる。表情すら凍る。眉1つ動かせない状況で、
嫉風の顔は、晴れやかだった。
また一歩
彼女が絞り出した声
「なんで…嫉風…」
彼女の声が嫉風に届くことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!