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ーリリン
今度は先程よりもハッキリと聴こえる。
空耳なんかじゃない。
そう分かった刹那、鈴の音はどんどん大きくなり、耳を塞ぐほどの大きさになった。
「うるさ…」
一体どれ程の大きさで鳴っているのか。
まず風に揺られた位ではこんな大きく、長く鳴り続けない。
誰か人の手で慣らさない限り。
そう、誰かが。
「…っ!?」
あやめは途端に怖くなった。
周りには誰もいない。
少し前まで祖父がいたが、祖父はこんな悪ふざけをするような茶目っ気は残念ながら持ち得ていない。
では、誰が?
あやめは何か、を人だと勝手に思い込んで見えないモノに恐怖した。
「誰か呼びに…」
行こうにもそれはそれで困った。
ここにずらりと並んでいるのは骨董品。祖父もとても貴重な物だと言っていた。
ここを自分が離れたら、盗まれてしまう心配がある。
祖父には任されたばかりだと言うのに。
自分の所為で大切な物が無くなってしまっては、せっかくコツコツと得て来た信頼が消えてしまう。
義理で育ててもらっているのに、それは非常にまずい。
「…よし!」
あやめは意を決した。
離れられないのなら、自身の目で確認するしかない。
とても怖いけれど。
誰かを頼ると言う選択肢は、彼女には無かった。
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