天女、舞い降りる

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 聴こえた。 今度はさっきよりも近く、鮮明に。 ―シャラン 「…!」 音が変わった。 どんどん大きくなる。 ―シャン! 「……これは」  屯所にある桜の大木。 風に揺れて花弁が舞うその様は、相も変わらず美しい。 ―だが。 その美しさは、今宵はとても不気味に思えた。 「青、白い…」 思わず口に出してしまう程、異様な光景。 桜の大木が、何かに呼応するように青白く光っていた。 それは何かを誘う光。  斎藤は確信した。 あの音は、この光の中から聴こえている。 「斎藤!いきなり…って、何だこれは…」  
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