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間者。その一言で土方の顔が一気に難しい表情になる。
だが、もし間者ならば何処のだろうか。
まだ壬生浪士組は出来たばかりだ。
その名が世に知られるにしても、些か早過ぎる。
では…この女は何者なのか。
分からない事が多すぎて、頭が上手く回転してくれない。
「とりあえず…そいつを中に運べ。目を覚まさねぇと話は進まねぇ」
「…御意」
「けど土方さん。何処に運ぶんです?…はっ…!まさか土方さんの…」
「まさかって何だ!まさかって!…ちっ、物置にしようと空けといた小部屋がある。そこでいいだろ」
「あははっ!はーい!」
「………」
斎藤は二人のやり取りを気にする事も無く、ただ自身の腕の中にいる彼女を見つめていた。
目を覚ます気配はまだ、無い。
「………」
彼女が目を覚ます時は自分が一番初めに傍にいたいと、ソッと望みを浮かべて斎藤は二人に続いた。
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