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名前だけ簡潔に発せられた言葉は、聞こえの良い低音であやめの耳に届く。
「アンタの名は」
「え、あ…」
射抜くような切れ長の瞳。
その視線があまりにも真っ直ぐ過ぎて。
あやめは声を発する事が出来なかった。
「…すまない。怖がらせるつもりは無かった…」
「あ、いえ…」
不意に、獣のような瞳が少し和らぎ、あやめは驚いた。
無愛想な人だと勝手に思い込みそうになったが、彼はただ不器用なだけだ。
「私こそすみません…。えと、私、春日あやめと言います。不躾で申し訳ないんですが、ここは何処ですか?」
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