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何でしょう?と首を傾げた彼女に胸がざわついた。
昨夜は閉じられていた瞳が、今、自分だけを映している。
この例えようの無い高揚感は何なのだろう。
「長州と聞いて、何を思う?」
斎藤は事前に土方から受けていた命を実行した。
彼女が目を覚ましたら、まず。
初めに素姓を調べろと。
もし何処か、例えば長州の間者ならそれなりの反応をする筈だからと。
「ちょうしゅう…ですか?」
「あぁ」
間者なら嘘を吐こうと取り繕う。
それが上手くやるにしろ、下手にしろ、必ずその動きを見せる。
観察眼に長けている斎藤に命ぜられた、重要な任務だった。
「聞いた事はありますが…特に何を思うとかは。それが何か?」
だが、彼女は。
疑わしき行動、動揺は見られなかった。
「何も無いのなら、いい」
斎藤はそれについて深く安堵した。
彼女の瞳、声色、表情。
間者の類では無さそうだ。
「はぁ…。あ!あの…、私からも一ついいですか?」
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