誘いの鈴-イザナイノスズ-

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 何だ?と斎藤は無表情で訊き返してくる。 あやめはゴクッと生唾を飲み、疑問を言葉にする。 「貴方は何故そんな恰好で、刀を持ってるんですか?」  先程から彼が発する言葉はどこか世間離れしてて、違和感を生じる。 着流しはまだいい。自分も仕事着だが着物を着ている。 刀もまだ許容範囲だ。 銃刀法違反はあるが、許可があればこの平成の時代でも刀が持てる。 しかし、ついさっき口にした、ちょうしゅう、と言う言葉。 それはもしかして長州の事を指すのだろうか。 その単語は知ってる。 地名を指す事も。 だが、今は長州とは言わない。 殆どの人が、山口県だと言う。 歴史好きな人が言うのであれば、それはもう疑問の答えが出てお終いだが。 彼はどうも歴史オタクで、コスプレをする人には見えない。 「…可笑しな事を訊くな。着流しを着なくて何を着るのだ。…刀を持つのは当たり前だ。武士なら誰もが持つ」 「……ぶ、武士!?」  あやめは大きい目をこれ以上無い位見開き、唖然とした。 どうやら彼は冗談を言うような人物では無さそうだ。 …眩暈がした。  
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