1829人が本棚に入れています
本棚に追加
/533ページ
何だ?と斎藤は無表情で訊き返してくる。
あやめはゴクッと生唾を飲み、疑問を言葉にする。
「貴方は何故そんな恰好で、刀を持ってるんですか?」
先程から彼が発する言葉はどこか世間離れしてて、違和感を生じる。
着流しはまだいい。自分も仕事着だが着物を着ている。
刀もまだ許容範囲だ。
銃刀法違反はあるが、許可があればこの平成の時代でも刀が持てる。
しかし、ついさっき口にした、ちょうしゅう、と言う言葉。
それはもしかして長州の事を指すのだろうか。
その単語は知ってる。
地名を指す事も。
だが、今は長州とは言わない。
殆どの人が、山口県だと言う。
歴史好きな人が言うのであれば、それはもう疑問の答えが出てお終いだが。
彼はどうも歴史オタクで、コスプレをする人には見えない。
「…可笑しな事を訊くな。着流しを着なくて何を着るのだ。…刀を持つのは当たり前だ。武士なら誰もが持つ」
「……ぶ、武士!?」
あやめは大きい目をこれ以上無い位見開き、唖然とした。
どうやら彼は冗談を言うような人物では無さそうだ。
…眩暈がした。
最初のコメントを投稿しよう!