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「ふふ、素直だね。じゃあ、着いて来て。…あぁ、逃げようなんて考えないでね。変な真似したら斬るよ」
「き!?」
あまりにも自然に言いのけた物騒な台詞。
あやめはサァッ、と顔を青くするが言った本人は相も変わらず笑みを絶やさない。
「あはは。ほら、早く」
笑ってはいるが、底知れぬ空気が拒否を許さない。
「ま、待って下さい」
あやめは身の危険を感じ、彼を見失わないように早足で追い掛けた。
ギシ、と木鳴りがする。
空に昇った太陽が暖かい。
確か今は夏の筈なのに。
夏特有の蒸し暑さが感じられない。
ここは山奥なのだろうか。
空気はとても澄んでいる。空の邪魔をする電線も見当たらない。
「何キョロキョロしてるの?着いたよ」
「え?…ぷっ」
ちゃんと前を見て無かったあやめはお約束通り、青年の背中に顔を打ち付ける。
「すっ、すみませっ…」
打ち付けた鼻を押さえながらあやめは彼を見上げる。
すると彼は驚き、目を見開く。
「君のそれって、計算?」
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