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「……計算?」
何の事だか分からないあやめは首を傾げる。
一体何を計算するのか。
そもそも何故そんな質問をするのか。
「もしかして天然…?やだなぁ…一番性質が悪い」
青年はハァ、と大きな溜息を吐く。
彼は女が好きでは無かった。
彼にとって女は弱くて、直ぐ泣いて、泣けば済むと思ってる嫌なモノ。
都合のいい時は媚を売り、悪くなったら男を盾にして己の身を守る。
卑怯なモノ。
実際、彼女を迎えに行くのも嫌だった。
昨夜見た時は美しいと思ったが。
きっと、気の迷いだったと青年は自身に言い聞かせた。
「あの…?」
「-っ、ああ、ごめんね。さ、入ろうか」
「え、あのっ!」
「ひーじかーたさーん!!連れて来ましたよー」
彼はあやめの制止を聞かず、スパン!!と大きな音を立て障子を開け放った。
唖然とするあやめ。
青年はニコニコしながら中へ入る。
「そぉーじぃぃぃっ!!てめぇは何度言いや分かる!!入る時はもっと早く声を掛けろ!!そして了承を得てから入りやがれっ!!」
「!」
ドスの効いた怒鳴り声。
それだけで声の主が御立腹なのが分かる。
…恐ろしい。
「あはは!そんな怒らないで下さいよ土方さん。ほら、連れて来ましたよ」
…前言撤回。もっと恐るべきなのは彼だ。
凄みの効いた声で怒られてものほほんとしている。
…恐ろしい。
「ちっ、後で説教だからな。…おい、入って来い」
「………」
あやめはとても行きづらい空気の中、勇気を出して部屋へと入る。
「失礼、します」
中には先程出て行った斎藤と、眉間に深い皺を刻んだ美丈夫な男。
あぁ、彼が土方歳三かと頭の隅で思う。
歴史の本で見た土方とそっくりだ。
…いや、瓜二つだ。似過ぎている。とても怖い位に。
「特殊メイク…?」
「…あ?何だ?」
「い、いえっ」
つい口に出てしまった事にあやめは後悔し、土方に座れと促される。
「…春日あやめ、と言ったな」
「…はい」
「女の身で性があると言う事は…お前の親父は武士か?」
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