予想外

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 あやめにとって、斎藤は初めての男だ。 付き合うのも、キスをするのも、居ないと寂しいと思うようになった感情も。 全部斎藤が初めてであり、最後だと思いたい相手だ。 付き合う、即ち恋仲という関係は、このままいけば夫婦になる。 ならない事も現代では殆どだが、幕末の世では別だ。 聞き齧った知識の中には、男は正妻の他に妾を作ったり遊郭で遊女を相手にしたり、一人の女だけを相手にするのは珍しいと言う。 そして女はソレを黙認、或いは分かってても何も言わないのだそうだ。 幕末の世では、男女平等ではない。 どう足掻いても、女の立場は弱いのだ。 しかし、だからと言ってそのまま受け入れるのはあやめには無理だ。 あやめは、幕末の世の理の中で生まれた訳ではないのだから。 だから、好きな彼を受け入れたいと思う。 それこそ、出来るもの全て。 ただ、飢えた獣のように求めて来る斎藤に、あやめは恐怖を抱いてしまった。 同時に、感じた事の無い自身の身体の昂りを。 一体これは、何なのだろう。 考えたいのに、知りたいのに、出来ない。  
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