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「ん…ぁ、は…」
名前を呼んで、出来れば一度この濃厚なキスを止めたい。
なのに、熱に浮かされてそれは叶わない。
昂る感情、身体。
次第に絡まる互いの舌。
気持ち良さの中に、斎藤の獣の部分を垣間見る。
恐怖で少し、心が彼を拒絶した。
「………っ!」
果てない激流のような深さが、突然終わりを告げた。
あやめの心が拒絶した、同時に。
「はっ…はっ…はぁ…」
解放されたあやめの身体からは一気に力が抜け、斎藤に寄りかかる。
一体何が起きたのか分からないあやめは、治まらない熱を持て余す。
考えても纏まらない思考。
事を起こした張本人を仰ぎ見れば、苦しそうに左手で口元を押さえていた。
「は、じめさん…?」
ふっ、ふっ、と呼吸する斎藤の顔は苦渋に満ちている。
あやめは訳も分からず、ジッと見つめる事しか出来ない。
が、やがて呼吸が落ち着いて来たのか、斎藤はゆっくりと瞼を閉じ、開いた。
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