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その言葉はあまりにも予想外で、頼もしくて、優しさと強さに包まれたような気持ちになる。
ただ、彼が触れた頬が熱くて、身体がふるりと身震いした。
「…怖いか?」
何が、とは敢えて斎藤は聞かなかった。
「いいえ。一さんが居てくれれば」
頬に触れた手を取り、あやめは甘えるようにすりつく。
この先何があろうと、彼と一緒ならばと心が言う。
生まれた時代は違えど、育った時代は違えど。
今、ここで、出逢った。
それだけで、目に見えない何かが力をくれる。
「…っ、あやめ」
「はい?」
「きす…をしていいか?」
「え、…っ!」
返事を聞く間もなく、斎藤はあやめを引っ張り唇を奪う。
先程覚えた言葉で。
「ん…はじめ、さ…」
突然の事で目を瞑るのも忘れ、二人は互いを見つめ合いながら深い口づけをしてゆく。
熱い舌が再び絡み合う。
あやめも先程で少し学習したのか、必死に斎藤に応える。
もう怖くは無い。
斎藤の独占欲が、大事にされているとあやめの中でそう処理されたからだ。
「はっ…煽るなと言ったのに、煽ったアンタが悪い」
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