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少し意地悪さが見える斎藤の瞳の中には、もう先程の獰猛な獣はいない。
あるのは、溢れんばかりの情だけ。
「ん…」
背中に布団の柔らかさを感じたあやめ。
気付けば斎藤を見上げるように寝かされていた。
「はっ、はじめさ…」
まさか、このまま?
今現在自分の中にある“そういう事”の知識を漁る。
初めは痛いと言うし、いや、痛く無かったと言う人もいるし、何も感じなかったと言う人いるし、あぁもう、どうしよう。
不安と、少しの期待の中。
あやめはギュッと固く目を瞑る。
「…っ、よし!来いー!」
「ーっ!?」
覚悟は決めました、と言わんばかりにあやめは叫んだ。
斎藤の動きを、止めてしまう程に。
「………ぶっ、…くくっ」
暫く呆然とした斎藤だが、やがて込み上げて来るものが抑えきれず笑いが徐々に零れて行く。
滅多に声を出して笑わない斎藤が、今は肩を震わせて。
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