予想外

13/31

1829人が本棚に入れています
本棚に追加
/533ページ
 少し意地悪さが見える斎藤の瞳の中には、もう先程の獰猛な獣はいない。 あるのは、溢れんばかりの情だけ。 「ん…」 背中に布団の柔らかさを感じたあやめ。 気付けば斎藤を見上げるように寝かされていた。 「はっ、はじめさ…」  まさか、このまま? 今現在自分の中にある“そういう事”の知識を漁る。 初めは痛いと言うし、いや、痛く無かったと言う人もいるし、何も感じなかったと言う人いるし、あぁもう、どうしよう。 不安と、少しの期待の中。 あやめはギュッと固く目を瞑る。 「…っ、よし!来いー!」 「ーっ!?」  覚悟は決めました、と言わんばかりにあやめは叫んだ。 斎藤の動きを、止めてしまう程に。 「………ぶっ、…くくっ」 暫く呆然とした斎藤だが、やがて込み上げて来るものが抑えきれず笑いが徐々に零れて行く。 滅多に声を出して笑わない斎藤が、今は肩を震わせて。  
/533ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1829人が本棚に入れています
本棚に追加