1829人が本棚に入れています
本棚に追加
/533ページ
「……?」
勢いで言ったものの、何もしてこない斎藤を不思議にあやめはそろそろと瞼を開く。
来いとは言ったが、言ったのに来ないのもなんだか。
「…何で笑うんですか」
見れば斎藤は顔を背け、口元を隠してはいるが目尻は下がっていた。
それはどうみても笑っている所で、あやめはちょっとムッとする。
せっかく勇気を出して言ったのに。
「いや…す、すまない。アンタがまさか、そういう事を言うとは思ってなくて、だな…その…」
もごもごと言い淀む斎藤。
斎藤からしてみれば、あやめの発言と行動は予想外の連発で可愛いと思う。
もっと色んな事をしたいし、色んな彼女を見たいとは思う。
ただ、さっきのは本当に想定外で出鼻を挫かれたと言う言い方は好ましく無いが、挫かれてしまったのだ。
もしかしたら今夜、一線を越える…と頭の隅で思っていたというのに。
「なっ…何故泣く!?」
最初のコメントを投稿しよう!