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この状況をどうすればいいのか。
斎藤は分からない。
何が正解で、何が駄目なのか。
…笑ったのは駄目だったのは学んだが、次は何をすればいいのか。
もう一度名前を呼んでみるか。それともこのまま抱き締めてみようか。
稽古や巡察時ならある程度の答えは出るのに。
あやめの事になると、どうも上手くいかない。
上手くやろうとすればする程上手くいかず、失敗ばかり。
「すまないあやめ…頼むから、此方を向いてはくれないか?」
その言葉と共に、斎藤は顔を背けているあやめの髪に触れ、口づける。
「…っ!」
ちゅ、とリップ音が部屋に響く。
それは斎藤にとって、自然に生まれた行動だった。
あやめの涙を止めたくて。
あやめの瞳に自分を映して欲しくて。
名前を呼んで欲しくて。
「…泣き止んでくれ」
次いで瞼に唇を落とし、あやめの顔が見えるように髪をかきあげた。
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