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(さ~てと、今日は試合終わったらデビルバード行ってすなぎもでも食ってくっかな~。食うくらいしか闘い以外の楽しみなんてねぇもんなこれ。ハハハ)
石で造られた部屋。
窓には鉄格子がはめられ4畳半のこの空間にはベッドと椅子しかない。
ただ{居る}ことにしか特化しない粗末なものだ。
「12番、出番だ。出ろ」
看守に乱暴に言い捨てられる。
その言葉に四畳半の住人はスッとボロボロのベッドから起き上がると、屈伸をしてあくびをひとつかます。
「ふぁ~ぁ~。どうせ今日も退屈な一日だ」
控え室を出ると、看守に連れられて古い石畳を行く。
通路は足元がぎりぎりで照らされるくらいに暗く、前方に終点は見えない。
変わり映えのしない、湿った通路を5分ほど行くとようやく灯かりが見えた。
石像の門をくぐると一気に視界が広がる。
『さぁ盛り上がってきたサマーカップ準決勝! 東門よりガロ・ブーシュカの登場だぁ!! ここまで圧倒的、破壊的な強さで勝ち続けてきました若干15歳。 目下優勝候補。 数々の大会で優勝をかっさらってきたこのガキンチョは、今宵も最高なパフォーマンスを見せてくれるのかぁ~!? 今、堂々の入場です』
拡声器からキンキンに叫ばれる実況の声。
見渡す限りの満員の客が一斉にこの真ん中の闘技場に注目し、盛大な歓声を上げている。
中には、いかにもといったサングラスに、使い古された手帳を広げたスカウトマンの姿が、何人もあった。
少年は砂の敷かれた闘技場の中央に歩み出ると、対戦相手を待った。
「あ~、今日もきれいな月が出てらぁ」
吹きさらし解放感たっぷり。空を望めるこの闘技場から見える月を、少年はえらく気に入ってる。
『続いて西門から入場~! 今日も暴れ、あらくれ、ぶち殺してくれるのか~!? 盛りのつきすぎた腐れ猫! 右首には獅子、左首には寅ぁ~! 双頭の猛獣、ヤコゼン!! さぁこいつに試合の意味は分かりゃあしません。 ゲートが開かれたら試合開始だぁ~!』
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