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西門の奥、その猛獣ヤコゼンは暗闇の中に4つの目を光らせて、対戦相手をギラギラに睨みつけている。
そして壊れることのないそのゲートを今か今かと喰らいはじめる。
この猛獣は常軌を逸している。
『さぁ待たせた野郎とメス豚共~! 準備はいいか~? 準備できていなくてもおっぱじめるぜぇ~!』
コロッセオ全体が固唾を飲んで見守る。
『れでぃ~、ふぁいと!!』
ゲートが開かれた。
その刹那、ヤコゼンは狂ったように少年に突っ込んでくる。
明るみになったその姿。
4本足の黄色と茶色の変わったトラ柄の体。
そこには2つの首。
右はライオン。左はトラ。
大きさはその動物を、ニ回りも三回りも凌駕する。
一つの生き物なのだが、各々の首は独自で生きているようだ。
獅子はたてがみをブルンブルンと振り回し、寅は大量の唾液を撒き散らせながら、来る。
そしてそのデカイ前足で少年に殴りかかる。
その足の中にはナタ程にも大きく、切れ味のよさそうなツメが覗く。
振り落とす。
目先5cmを凄まじい速さで通り過ぎるヤコゼンの前足。
少年は寸手でかわすとバックステップし距離をはかる。
だがそこに間髪いれずに2本の前足で押さえ込みにかかるヤコゼン。
この巨体でこのスピード。
これはとてもかわせるものではない。
「いったれヤコゼン、噛み殺せ!」
ヤコゼンに賭けているのであろう客が、大声で野次を飛ばす。
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