病室と娘とビッグマックと

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窓から遷りゆく風景は年月と共に色を変え、観るものを退屈にはさせなかった。 ただ、娘はその景色を感情を抑え、かれこれ十数年じっと観察をしていたのだ。 私は父として、娘に何もしてあげることはなかった。 不意に起きたスクーター事故。娘に落ち度があったのか、十数年間欠かすことなく娘の見舞いを寄越す彼に原因があったのか。真相はいつも藪の中にある。私はそれを外からただひたすら眺めるだけしか行く宛はないのだろう。 面会時間ぎりぎりの午後六時の少し前に職場から切り上げたおかげで、私は食事をする暇を失ってしまった。仕方なしに普段はあまり利用することのないファストフード店で、マックポーク、ビッグマック、ドリンクを包んでもらい、看護士の許可を得て個室の中に持ち込んだ。娘は相変わらず窓の方に顔を向けていた。髪はもう腰のところまできているのだろうか。精気なく、青白く輝く肌から何かマネキンの不変的な美しさを感じていた。それは、もう、二度と魂の入る余地のない――
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