序章

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「・・・・助けて」 うっすらだがそう聞こえた。 僕はまた夢を見ているのだろうか? 目の前に誰かいる・・・ 誰だ? 暗くてよく見えない。 同じ歳くらいの女の子が怪我をしているのは分かる。 助けてあげたい でも裕二の言葉が引っ掛かる。 おかしい この大怪我の中、笑う事は無理だろう。 取りあえず僕は状況確認のため女の子に近づいた。 一歩踏み出したところで感じた。 これが裕二の言っていた<殺意>か 凄い 背筋が凍りそうだ。 二歩 足が震えて来た。 三歩 と歩こうとしたが駄目だ、足が動かない。 何故だ。 本能が行くな、そう告げているのか? 違う。そうじゃない。 僕自身が行きたがっていない。 それどころか、僕は後ずさんでいた。 女の子は笑っていた 不気味だ。 怖い。 何故? 何故恐れている。 女の子だぞ? 嫌な笑い方だ。 弱者を罵るかの様に笑っている 逃げたい。 早くこの暗闇から出たい。 夢だと分かっていても怖い。 誰か助けてくれ。 叫びたいけど声がでない 必死で叫ぼうとする。 やはり声はでない。 その時、声が聞こえた。 聞き慣れたあの声だ。 「起きて、お兄ちゃん。ご飯出来たよ! 早くしないと冷めちゃうよ!」 そんな早紀の声に僕はようやく眼が覚めた。
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