序章

9/9
前へ
/35ページ
次へ
僕は女の子を探した。 おかしい。 前後左右、眼を懲らして探したが何処にもいない。 「俺はここだぞ」 はっきり聞こえた。 女の子の声だ。 「何処にいる!」 僕は言い放った。 あれ? おかしいな。 声が出るじゃないか。 「アハハハハ。今頃気付いたのか」 そう笑いながら女の子は僕の真後ろに居た。 僕の陰から出てきた。 「どうだ、びっくりしただろ?」 女の子は自慢げに話し掛けて来た。 「あぁ、驚いた」 僕は冷静に対処する。 でもこの台詞はただの建前だ。 本当は凄く恐い。 傷だらけの女の子がいきなり僕の陰から出て来るんだ。 おまけに笑いを見せる。 「僕は 藤咲 トオル、君は?」 僕は尋ねた。 「俺は、[FirstSound=Sky:ファーストサウンド=スカイ]だ。」 日本人じゃないみたいだ。 そもそも人間ではないだろう。 「その傷痛くないのか?」 僕は傷の心配をした。 「お前こそ恐くないのか? 俺は人間じゃないんだぞ?」 ファーストサウンドは変わった物を見る様な眼をする。 「じゃあ君は何なんだ?」 「俺は<吸血鬼>だ」 場の空気が凍った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加