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午前1時
静まりかえった真夜中。オフィス街が建ち並ぶ。半月の月明かりが硝子に跳ね返り薄ぐらくビル群を照らし出す。
ビルが月明かりを遮り道路に暗闇を演出する。
僅かにビルの隙間を縫うように漏れる月明かりが、アスファルトを照らす。
何処からともなく集まった虫達が、街灯のほのかな光りに吸い寄せられる。
白熱灯がチッチと空しく悲しい生命の終わりを奏でると、同時に街灯が一瞬暗くかすむ。周囲に焼け焦げた微かな臭いをただよわせる。
何処からか現れた無数の虫達が街灯の光りに吸い寄せられ、無惨な変わり果てた姿で、まるで綿ぼこりの様に街灯の下に溜まっている。
静まりかえった道路を、10トントラックが排気ガスを巻き散らしながら街灯の横切る。
まるで鳥の羽の様に宙を舞い踊る。
「私を見て見て。まだお空をこんなに飛べるだよ。こんな優雅に舞う姿は美しいでしょ。ほら。」
ひらひらとゆるやかに虹色に鮮やかにまるでヒスイの様に光り輝く。麟粉を撒き散らす。ビル風に乗せて華麗に不規則に廻りながら踊ってみせる。
そう長くは舞う事が出来ない。
アスファルトがまるで、虫達を包み込み静かに音も立てずにゆっくりと柔らかく包み込む。
「いつでも舞い踊ってね。貴方
の帰ってくる場所として迎えますから。」
ほとんど外を歩く人も見当たらない。
信号機が赤信号と黄色で点滅をしている。
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