第一章 【居場所】

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「ねぇ!! 一度で良い!! ライブだけでも聴きに来てよ!!」 「しつこいなぁ」 「俺達の演奏を聴いてから返事してくれたら良いから!! ねっ?」 「声が大きい!! バンドは組む気無いって何十回言わせるわけ!? 他にも誰かいるでしょ!?」 放課後の廊下で私の後ろをまとわりつく男。 3年C組 栗原 亮(くりはら りょう)。 17歳。 明るく運動もできて友達も多い。 まぁ…勉強は別としても、ちょっと童顔の可愛い笑顔が母性本能をくすぐる“らしい”。 でも私は今、コイツに最高に迷惑してる。 「亮くんバイバーイ!!」 「あっ、バイバイ!! ねぇ、のあチャンしか居ないんだって!! 頼むよ。 週末空けといて?」 かれこれ2週間、この男は毎日私に付きまとっているから。 「今、亮くんと居たの誰?」 「さぁ?」 そんな声が聞こえる。 私はくるりと振り向いた。 「トイレ!! 入りたいんだけど。 ついて来る気?」 私は女子トイレを指差した。 「待ってます」 はぁ…。 私はトイレに座って大きな溜め息をついた。 私が路上で歌っているのを、たまたま栗原が聴いていたのが始まり。 学校での私は、すっぴんにみつ編みにだてメガネ。 正直ダサい。 プライベートではパーマに化粧、ボディピアス。 学校での私とは別人。
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