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極端に言うなら、それは異なる政治体制への二極分化であった。「進化の過程」とやらで志を最後まで貫徹した種族と、半ばで妥協を友とした種族とが異なる環境の中で、一方は悠々と、もう一方は切迫した生活とを、それぞれが余儀なくされる今日このごろであった。
結論から記せば、「最良の専制君主」と「最悪の民主政治」との、薄氷の上の「中立」であった。
水深2,500メートルのいわゆる大陸だなを形成する広大な岩盤の原に「マロン王国」は存在する。耐水圧性の特殊なジェルをドーム状に張り、内部を空気で満たすことで、海中に文字どおり「街」を形成していたのである。その程度であれば、本来水中での呼吸が困難な陸上の「かたぶつ」であっても十分に生活が可能であったろうが、「かたぶつ」としての矜持と身体能力が彼らを地上へと縛りつけていた。
しかし、その建国は一方通行というわけにはいかなかった。
「マロン王国」建国以前は単に「統一政府」と呼称される、散文的かつ無個性な「灰色」の人物群による色あせた伝統に頼る、形だけの民主主義国家であった。やがて、忍耐に耐えかねた人々の心の中で、疲労と倦怠が希望と野心を駆逐し始める。消極が積極に、悲観が楽観に、怠嬰が進取に、それぞれ取って変わった。科学技術方面における新たな発見や発明が後を絶った。
それにともない、「統一政府」は自浄能力を失い、利権や政争にのみ食指を動かす衆愚政治と化すありさまであった。
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