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そしてまた同時刻。
東京郊外に存在する西澤邸における戦闘は、どうやら地球軍の勝利に終わったようである。ようである、というのも、まだ一時的なものであったし、第二陣ないし増援部隊が遠からぬ将来に登場することは明白だったからである。
「なんだぁ、こりゃ?」
裏表の激しいご令嬢西澤桃華は自分のちぎった(正確には裏桃華)食人植物の片手を片手に事も無げに問うた。
西澤桃華の非公認のペットとして(一部の者だけに)知られるケロロ小隊突撃兵タママ二等兵は、自身の驚愕を表情と声の双方で表現した。
「これは…ケロン軍の突撃兵器ですぅ!」
「何でそんなもんが家に飛び込んで来やがるんだよ(怒)」
彼女の言動は、とても地球経済の半分を支配する大財閥のご令嬢とは言い難かったが、現在地球上で行動が可能な例外的な人間が共通する疑問を雄弁に語っていた。
戦争の跡のような有り様の西澤邸だが、大半を破壊したのは彼女自身であることはここだけの話だが…。
「どうやら動けているのは私たちだけ…
第一級非常事態のようですな」
元格闘家の執事であるポール・森山が事実を冷静に指摘してみせた。彼がいなければ地球軍の敗北は必須だったであろう。
(大変、冬樹君が…)
表側が不安を提示してみせたが、裏は動じない。
「わーってるって、俺にまかせときな!」
頼もしいこと、おびただしいものがあった。
「なんだかよくわからないけど………
燃える展開ですぅ!」
タママが隠しきれない感情を舌端にのせてそう発した時、彼は某ロボットアニメの主人公よろしく何かを感じとった。
「ダイカソコンカクレトリヨロォ~!!!!!」
神速の身体能力でマックスターンを決めると、目からエネルギービームを放った。光条は空間を薙ぎ、壮大な石造りの庭園を包み込み、破壊し、吹き飛ばした。「ウハハハハ!粉々ですぅ!」
自信に満ち溢れたその言動を、しかし闖入者は許さなかった。
「惜しい~、ちょっと遅いっす」
タママの背後で棒読みするような口調が響きわたった。
「お久し振りっす、師匠」闖入者は言った。
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