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「…よりによって…お前が来るとはな」
燃える軍人の威厳はこのとき精彩を欠き、半ば独語めいた口調は空しく大気中に吸収された。
「どうしたの?」
文明が始まって以来、恐らく一兆回は使われたであろう抽象的な質問を、日向姉弟の二人は発したが、ギロロは聞いておらず、もしくは聞いていないふりをしていた。
鋭い眼光は無表情な電柱に注がれていたが、やがて全身に搭載していた武器群と一緒に肩を落とした。
二人が、電柱の先端にケロン人を見出したのは、まさにその時だった。鋭い眼光だけは、弟と瓜二つであった。
「…ガルル!」
その声はうめきに近かった。
―軍曹たち以外の…ケロン人…―
日向冬樹の好奇心は圧倒的な進撃で恐怖心を撃滅するかに見えたが、理性がそれをかろうじて防いだ。
新たな侵略者は、同志の面前に降り立つと論評した。「兄を呼び捨てにする生意気ぶりは健在のようだが…」やがて腕を組み、弟を異なる角度で見やると、「そのくせ侵略の方は全然進んでいないようだな、ギロロ」
一方の姉弟は驚愕に唖然とし、もう一方の兄弟は、兄は憮然とし、弟は釈然とするなか、気まずい沈黙はやがてガルルと呼ばれた紫色のケロン人が破り捨てた。「気をつけえええェェェ!!!!!」
凄まじい号令は雷鳴となって、残った三人の鼓膜を乱打した。反射的に反応したのは、ギロロだけであったが。次の瞬間、彼の言動に日向姉弟は沈黙した。
「回れえェェェ、耳!!!」
再び登場した気まずい沈黙を、兄は黙然と無視し、弟は困惑の色をあらわに耳を振り回していたが、見苦しい弟に彼は手榴弾を投げ渡すと、場の空気と共に吹き飛ばした。
「回してどうする」
怠惰と堕落にサンドイッチされた弟に対する、彼の慰労の席であった。
「その程度の状況判断もできん体たらくだから、本部もようやく重い腰を上げることになったのだ」
遠退く意識の中、ギロロは自分の判断の、もしくは予想の甘さを罵った。彼は誰にも気づかれずにある決心をした。
「ケロロ小隊は本日をもって地球侵略任務より更迭」ガルル中尉の声が辺りに言霊し、乱反射した。変わって私達の小隊がその任を引き継ぐ!!」
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