外伝・マロン衰亡の記録

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…ケロン標準暦を迎える少し前、正確には半年前。 一隻の探査船が、ガマ星雲第46番惑星をその射程にとらえていた。後世に伝わることのない名を持つその船は、名もない乗組員三人を体内に収納し、酷使に不平をならしながらも、立派に責務を果たそうとしていた。ケロン星進発より百十年が経過していた。 …ガマ星雲第46番惑星マロン星は第58番惑星ケロン星より、南東28万光秒の距離に位置する。大気の構造は地球のそれと類似しており、恒星との距離がケロン星とほぼ一致するため、気候はケロン星に準ずると見て間違いないだろう。特長は陸地がほぼ無いに等しいことが挙げられる。全体の97%以上を海水(でいいのだろうか)が占めており、当然少ない居住地をめぐって熾烈な争いが続く訳である。しかし、いささか滑稽なことに、「熾烈な争い」を陸上の少ない居住地のために費やしている人間の数は、惑星全体の総人口の10%に満たないのである。残りの大多数派はというと、これが水中を居住地とする、宇宙では珍しくもない連中であった。「進化の過程」という無個性極まる言葉を当時の学者が残したように、長い年月をかけた自然の気まぐれが産んだ、皮肉な現状であった。
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