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マスターと男は、青年が話しだすのを待った。
「実は…」
数分だっただろうか。
青年が、ぽつぽつと身の上を話し始めた。
自分は、病気だと言うこと。
医者に、治らないと言われたこと。
今は仮退院中だが、次はもうないこと。
そして……。
「死ぬ前に、一度でいいから、ちゃんとしたバーで、カクテルを飲みたかったんです。
いかんせん、カクテルの名前は、ジントニックしか知らなかったんですが」
そう言って、恥ずかしそうに笑った。
その顔は、まだ幼さが少しばかり、残っているように見えた。
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