プロローグ

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「誰だ…………そこに……いるのは……」  焼け付いて水分すら干上がった喉からは掠(かす)れた声しか出ない。それでも、相手側にはキチンと伝わったみたいで。 「はて? 自分が誰かと問われれば難儀だな。聞かれるとは思ってもいなかったから、少々返答に困る」  口振りからしてあまり困っていそうにはない。恐らくだが、予期していない質問をされて楽しげに笑っているのであろう。  あぁ、腹が立つ……。私の最後の看取り人がこんな奴だというのに、心底腹が立ってくる……。 「おっと、考えている時間が無いくらいに貴様はヤバそうだな。出血多量に高濃度の病原感染、腹はもう言うまでもないくらいに致命傷に至っている。いつ死んでもおかしくない状態だ」  そんな事は言われなくても分かっている。腹の中身(内臓)はないし、腕の無い方からは血が出るのは止まらないし、体はもう死を受け入れ始めている。  どうやっても助かりはしない。だからそう、後は私自身が生を諦めるだけで、生涯の幕を下ろせるのだから。  今更言われなくても……、確認するかのように言われたくはなかった。  限界だ。そう思い目を閉じた。  暗く閉じた視界。精神も生きる気力も同時に闇へ落ち、体の感覚も消えていき石のように固まっていく。  私は生きるのをやめて、神に蹂躙(じゅうりん)された死因のままに天へ召されようとしていた時。  影の主は私に言う。
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