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「死を受け入れ始めたのか、情けない。
致命傷を負ったそんな体で今まで生きていたのは、死にたくないという強靭な願いがあったからこそ。でなければ森の中で既に息絶えていたというのに、今更生を諦めてどうする?」
死にたくない……死にたくなどなかった。私の剣技は一度も振るわれる事もなく、気付いたら死に体であった理不尽な現実を前にして、素直になんか受け入れるハズはなかろう。
「生きたいという願いを聞いて来たというのに、来てみた途端に生きる意志なしとは。まったくやる気が削(そ)がれる」
そんな事は知らない。誰だって、死の足音が近付いて来たら強がってなんかいられない。生きたいと願った者も、絶対的な死の宣告なんか逃げられないのだから。
受け入れるしか……ないだろう。
「………………………………」
「おい、少しは何か言い返してみろ。……まったく、怒らせようとしてみても口げんかに乗る気も無し。なんでこんな奴が選ばれたのか」
ぶつぶつと文句を垂れながら、声の主はそこで一旦間を入れてから。
「死を受け入れるというのならば止めはせぬ。だが、生きたいという意志がまだあるならば我に願え。さすればこの理不尽な死から貴様を救い出してやろう」
そう言い、私に向かって救いの手を持ち掛けてきたのだった。
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