プロローグ

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「もしだけど、私が使命を放棄したら一体どうなるんだ?」 「契約違反は勧めんぞ。星が違反を確認次第、与えた力と共に蘇らせた命を返してもらう事になる」 「なる程、また死にたくなければ働けって事か。どうせ救われた命だ、文句があるわけではないが」  使命を果たすだけの命。そう考えると少し寂しさを感じた。  致死からのリトライとは言っても、せっかく救われたというのに星に尽力する事しか使えないのは、あまりにも寂しい余生となるだろう。  気落ちしながら言葉を紡いでいたら、私の内情を察したのか星の使いは。 「前報酬として力を与えたが、使命を遂行した時の報酬はちゃんとある。言ったであろう、これは契約だと。  瀕死の状態を救っただけで残りの人生を頂くのはあまりにも不釣り合い、契約はお互い平等であらねばならんのは星の考えである。だから」  平等ではない取引を、平等にする報酬というのは。 「使命を果たした成果をもって、貴様には第2の人生を過ごす権利が与えられる。とある他人へと生まれ変わり、後は好きに人生を彩れば良い。  この度の生涯を星に尽くすのであれば、功績を認めて新たな生を得られる。これで見合った契約であろう」  それはもう、こんな下らなく閉じて新たに開いた人生など、投げ出しても構わないくらいの報酬だったから。 「力も貰えて第2の生も保証されたら、至れり尽くせりさ」  地を踏みしめて立ち上がり、正式に受託したと星の使いと固い握手をかわす。  こうして神に敗れた私は、星の契約者として再び聖域奪還の戦いに挑んだのだ。
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