兄が帰ってきた

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今、僕の部屋にまるでモデル雑誌から飛び出してきたような足の長い女が座っている。 僕がキッチンでコーヒーを淹れている間、部屋の中をキョロキョロと見回している。 彼女は白地に赤色の花の模様が描かれたトップスにデニムのショートパンツを穿いて、その長い生脚を惜しげもなく床の上に放り出している。 こんな女が本当に兄貴だなんて信じられない。 兄貴だというストッパーがなかったら、こんな綺麗でセクシーな女が僕の部屋に来ていること自体まるで夢のように思えただろう。 しかし、現実はまるでモデルのようなこの女が元男で、僕が憧れていた強くて悪い兄貴だなんて……。 現代の性転換手術はここまで進んでいるのか? そんなことを思いながら、僕は淹れたてのインスタントコーヒーを彼女の前に差し出した。 「お、サンキュー」 兄貴はあっさりとそう言った。 セクシーな見た目とはまるで違うサバサバとした性格。 まるでハーフのような顔立ち。 事情を知らない奴が見れば、間違いなく今の兄貴は高めのいい女だろう。
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