アオカビ兄弟

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照明を落とした真っ暗な室内。 カーテンの隙間から薄っすらと月明かりが射し込んできていたが、室内はほぼ闇に包まれていた。 今、僕は独りベッドの中で毛布に包まって兄貴を待っていた。 兄貴はシャワーを浴びている。 どういうわけか、僕は少しドキドキしていた。 言っておくが僕はゲイでもないし、近親相姦愛好者でもない。 至って普通の大学生だと思っている。 しかし、だからこそかもしれない。 兄貴であるということを忘れれば、今から僕のベッドにやってくるのは脚の長いとモデルのようなとびきりいい女だ。 しかも、香水を付けているせいか、元男である兄貴からはいい匂いがしていた。 僕の心臓の鼓動は自然に速くなってきている。 落ち着け、落ち着くんだ……。 僕は自分にそう言い聞かせた。 これで兄貴がベッドに入ってきてペニスが立ってしまったらどうしよう。 僕は勝手に昂った自分の気持ちを静める為、昔のことを思い出し始めた。 まだ幼い頃の兄貴との思い出。 しばらくの間、心の引き出しの奥底にしまいっ放しになっていた古の記憶を、僕は引き出しの奥底から引っ張り出してきた。 あれは、まだ僕らが小学生の頃のことだった。 僕らが〝あおかび兄弟〟と呼ばれるきっかけとなった事件が起こった。
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