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それは、事件などと呼ぶにも至らない些細な出来事だった。
それは、ある日の昼休みのことだった。
その日は、月に一度の弁当持参の日だった。
校内の二つの教室である事件が起きた。
「キャー、何これ!!! 早乙女君のお弁当の中に変なものが入ってる~」
その声をきっかけに、僕の周りにはクラス中の生徒たちが群がってきた。
「うわぁ~、何だよこれ」
「クセー」
「これ、カビじゃない?」
「気持ち悪りー」
そう、それはオフクロが気まぐれで入れたゴルゴンゾーラだった。
今ならそれがイタリア料理などで使われるブルーチーズの一種だと分かるが、当時小学生だった僕にはそれが何なのか分からなかった。
それは、同級生の奴らも兄貴のクラスの奴らも同じだった。
異変に気づいた担任の先生がみんなに言い聞かせてももはやそれを留めることはできなかった。
その日から僕のあだ名は〝オアカビ〟となり、それはいつしか兄貴とひと括りとなって〝アオカビ兄弟〟と呼ばれるようになった。
その日から僕は「アオカビ、アオカビ」とイジメられるようになったが、兄貴は「そんな奴らは全員ぶん殴ってやればいい」と教えてくれた。
そして、僕は兄貴の言葉をそのまま実行し、いつしか僕らを〝アオカビ〟と呼ぶ者はいなくなった。
しかし、それは表向きの話で、裏で僕と兄貴は〝アオカビ兄弟〟、もしくは〝ゴルゴンゾーラブラザーズ〟と囁かれ恐れられていた。
そう、その頃から僕と兄貴の悪名が町内で広がり始めた。
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