アオカビ兄弟

5/9
前へ
/101ページ
次へ
ケンカ、カツアゲ、万引き……。 気づくと僕と兄は子供がする悪事を一通り覚え、それは次第にエスカレートしていった。 しかし、僕にはそれが犯罪であるという自覚はなく、兄と一緒にゲームを楽しんでいる、そんな感じだった。 万引きをはじめ、ケンカやカツアゲも自己顕示欲の象徴だった。 小学生のうちはまだかわいらしいものだったが、僕が中学に進学し、兄貴が高校生になると、それはもはや犯罪以外の何ものでもなかった。 そして、僕らはあるとんでもない事件を起こし、遂に警察に逮捕されそうになった。 しかし、僕は逮捕されなかった。 兄貴が僕を庇って、一人で罪を被ってくれたのだ。 兄貴は裁判で有罪が確定し、少年院に送られた。 僕は日常生活を続けることができたが、兄が逮捕されたことで地元にはいられなくなり、そのまま家族と共に引っ越すことになった。 兄貴が捕まったことで、僕は生まれてはじめて罪悪感を感じ、庇ってくれた兄への謝罪の念もあり、いつしか犯罪を犯さなくなり、普通の暮らしをするようになっていた。 兄の逮捕がなければ、僕は今とは全く違う人生を歩んでいただろう。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加