プロローグ

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僕は強くてカッコいい兄に憧れる反面、ずっと自分の胸の内に秘めた願望があった。 それは兄ではなく実は〝姉〟が欲しかったということだった。 優しいお姉ちゃんが欲しい。 男なら誰でもそんな気持ちになったことはあるのではないだろうか? 妹でもそれは同じことだが、異性の兄弟が欲しいと思うのは極自然なことだと思う。 姉がいれば、姉の女友達とも知り合える。 中学になった頃はそんなことを思うようになっていた。 兄も別にモテないわけではなかったが、当時ワルぶっていた兄は周囲から恐れられ、普通の女の子は兄を怖がり、敬遠していた。 しかし、僕はそんな自分の願望を秘めたまま、兄にはそのことを打ち明けたことはなかった。 別に話してもよかったが、わざわざ言うほどのことでもないような気がしたのだ。 別に隠しているつもりはなかった。 今なら話しておけばよかったと思う。 兄が音信不通の行方不明になる前に……。
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