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雄馬がいた時間は30分くらいだっただろうか。
「今夜は彼女とお楽しみか?」なんて茶化されながら、雄馬は近くにいた大地や進司の背中を叩き、店を出て行く。
……ちゃんと、泉の誕生日プレゼントと称したキャンディをデニムのポケットに押し込んで。
「じゃあなー、雄馬!」
「また飲もうな!」
「おぉ、また呼んでくれ」
雄馬がいなくなり、ほんの数秒、静けさに包まれる。
「良いのか?泉……」
雄馬が出て行った出入り口を見つめながら、松田がポツリとつぶやく。
「何が?」
「時効だろうから言いやすいかと……せっかく会えたのに、何も言わなくて良かったの?」
「………、いい」
机に顎を乗せ、脱力感に襲われながら返す。
でも、不思議と気持ちは穏やかだった。
彼女の存在を聞いても、特に胸は痛まない。
動揺したくらいだから、ちょっとくらいダメージになるかと思ったんだけど。
じゃあやっぱり、きちんと過去の恋心として自分の中で清算されてるってことなんだ。
「お前がいまひとつ……こう、もしここで脱ぐでもすれば抱いてもらえたかもな!」
「バカ、最低!」
………でも。
「どうだった?」
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