2XXX年

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時は日進月歩の世にて。 人が常に進化を貪欲に求める世の。 彼等が築き上げるは数多の知。なれば、無尽蔵に広がる情報社会の世となるのだ。 然れども、人間等が斯様に貪欲に求めども、知、が枯渇する訳も無く。 知、は氾濫する川の如く乾きに飢えた彼等を虜にし。なれば、彼等は無我夢中で、知、を追求するか。 其の姿は、目前の御馳走を貪り食うかの如く卑しく。 意地汚く美徳の欠片も無い彼等は、正しく飢えと渇きに苦しむ亡者、餓鬼の様。 彼等の所業は、最早神への冒涜とも言え様か。或いは、神さえも超えようとしているのか。 其れ程只管に、知識を探求するのは、欲望。 果として生じる物は、跳躍進化説宛ら、次の世代へ行くまでの著しい高度な技術発展。 其れは、神が人を創るよりも速く。而して、大きな過失だった。 人等が、左様にても尚求めるは不満故に。 なれば、人等が何よりも求めるのは、己等の進化故の。 何となれば、人等の隣りには、のべつ脅威が威風堂々と佇んで居り。 微生物や植物、果ては人以外の動物が、何らかの変化、進化を遂げている今世で。 時が停止したかのように、変容する事の無い人間等は、畏怖を抱えるのだ。 故に、人等は知、を求める。 「嗚呼、何故我等は進化せぬ。なれば、知の進化を、」 然う嘆く人等の愚にも付かぬ行いに、不肖の子等は何と浅ましい事か、と嘲笑うのも仕様も無しに。 如何様に知、を求めども、其れは人等の進化では無いと言うのに、だ。 其の事実に眼を逸らし、認め様としない人等は、何とも惨めで可哀相な生き物よ。 故に、彼等は過ちにも気付きやしないのだ。 嗚呼、愚かで脆弱な人等。 君達は、其れでこそ愛おしい。 2XXX年。 著しくも知識の発展を重ねた国々は、幾許かの格差はあれど均衡を保ち、平穏と呼べる世だった。 なれど、豊かで平安、尚且つ人の活気に溢れていたのは、僅か数年の。 世の崩落は、真に呆気無く。 最大の起因は、人等の深い底無しの沼の様な欲望。 そして、人等に元来具わる闘争心。 其れが、己が世を束ねるべく、と言う使命感を生じさせ、以って世がひとつになる時こそ、真の安寧が訪れるのではないのか。 そう、人等は人の頂きを望んでしまったのだ。 事の発端は、其の愚かな欲望を叶えんとした、2つの国で。 愚かな2つの国が志は同じ、と互いの腹の内を隠しながらも、秘密裏に同盟を結んだのだ。 其れが始まりで終わり、と知らずして。
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