2XXX年

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幾度もの蹉跌を繰り返し。而して、国が巨額な投資を為して創り上げた其れは、正に人間等と何ら変わり無い姿形の。 否、人間の美貌を遥かに超越した女だ。 なれば、美、と表現するには礼儀知らずな物で。 然の如き女は、白く透き通る肌に、艶やかなスカイブルーの髪を靡かせれば、清澄な川の流れを連想させる。 尚且つ、地球上にある如何様な宝石よりも、青く美麗な宝珠を瞳に宿せば、誰人でも息を呑み、終いには呼吸まで停止するやもしれぬ。 其の女の名は、ヴァルキューレ、と。 戦いに勝利を齎す女神の意を込めて、名付けられた。 然様な科学者等の奮励努力の賜物とも言える彼女は、正に人間等の望む出来。 人の形をしてはいる物の、其の身体能力は人間自身やアンドロイドを遥かに凌駕し、然様な知能は計り知れない程の。 其れ故に人間等は思い巡らせた。 計り知れぬ知能を持つ彼女の存在は未知数。なれば末恐ろしい彼女に対して人間等は、身をぶるり、と震わせ。 なれど、彼女は、人間等に真に従順で。 然らば、人間等が臆するのも杞憂に過ぎず、其の所思も次第に薄れて行き。 片や、人間が人間を創りし事への背徳感も消え失せれば、彼等は真に人か。 過ちて改めざる是を過ちという。 斯くの如き言葉がある様に、誰人でも過ちを犯す。 なれど、真の過ちとは、過ちと知り尚悔い改めぬ事だ。其れこそ真の過ちよ、過ちなのよ。 彼等は正に其れだ。 彼女を創った事を過ちでは無しと否認する故に、彼等の思考が破綻を来すのも何人たりとて気付かずに。 斯様に緩んだ螺子頭等は、かてて加えて其れを罪とせず、自惚れへと変換する訳だ。 あまつさえ己等が神と思惟すれば。其処に神が居たならば、然もちゃんちゃら可笑しいわ、と腹を抱えるだろう。 而して、世を統べるは己等よ己等しか居らぬ、との考えに至れば、はておかし。 彼女を創る由も人間等は、国を守る為と言わなんだか。 禁忌なのだと会得して居らなんだか。 兎角、彼等を斯くも狂わせたのは、魔性の女神の所為か、将又己等の所為か。 而して、狂った人間等は、彼女を動乱の渦中に送り込めば。 忠犬の如く付き従う女神は、主人への命を全うせんと、戦火に更なる混沌を。 女神の名の如く勝利を日本へと献上し続ければ、人間等は手を叩き。 愚昧な彼等が、四方や世の終焉を招く、と。 己が神と唯唯信じて止まぬ彼等の欲も此れ又深くば、溺れて居るのにも気付かなんだ。
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