2XXX年

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而して。 大国を壊滅的な迄に追い遣った日本は、四方や彼等の独壇場。 軍国家と変じた国が、女神を使役し己等が力を掲げ倣岸たる態度の。其れは、正しく至当な結末。 なれば、次から次へと他国を完膚無きまで破壊し尽くす。 然様な冷酷無情の殺戮を行う彼等が得る物は、力も然る事乍ら、力よりも何よりも得た物は無慈悲な心。 否、彼等は得たのでは無く、亡失してしまったのだ。人の至情を。 然らば、非の道が世間並、四方や至当と唱える彼等に、攻め入ろう何ぞ思惟する国が無くなれば、続々と降伏を宣し。 畢竟するに、実質日本が世を御する事と相成れば。 争覇戦は終息したのだ。相違無く戦世は、終結したのだ。 然れども、日本相手に戦に敗れた国々は、飢饉や貧窮のどん底で、自由すらも剥奪されれば、肝心な安寧世はそも何処に存するか。 低賃金の重労働に、背理的な法であれば、人等の扱いは奴婢。 否、奴婢以下よ。人を人と扱わねば、彼等は何と言う生き物か。 なれど、斯様な冷遇にも、幾ら人以下の扱いだろうと、唯凌ぐしか出来ずに。 左様にても根限りに生きてやろうと、初めは人等の眼にも光が宿っていたのだ。 なれど、其の光も次第に消え失せては、死人色の如く澱む。 然様な此れ以上無いと言う辺際に立つ国々等と比較すれば、日本は何と富に溢れた豪勢な暮らしか。 己が破壊した国が飢饉に呻吟しようが、毫も気に掛けず、寧ろ然の如き憔悴した彼等を嘲弄した。 然様な積もりに積もった積年の辛苦が爆ぜれば、飢饉や貧窮、果ては人外の扱いをも革命の糧となり。 一度消失した光に別の光が宿れば、死人等は冥府から這い出て来たのだ。 而して、世界各地から優秀で血気盛んな若き指導者等が現れ、革命の世が始まった。 なれど日本は泰然自若に椅子にどかり、と腰据えて、抱腹絶倒の。腹を抱えては、彼女に命ずるのだ。 自称神が指差す先に女神が勃然と現れれば、其の地を、其処の若き指導者等を食い尽くした。 故に、若き者が倒れ、四方や抵抗する気も根こそぎ刈り取られては、絶望の。 暴君へと落魄した日本に。 革命を起こすも仕損じれば、更に暴戻な処遇を受ける他国と。正に、大いなる歴史の変動よ。 なれど、彼等のみ成らずして彼女もまた彼等と同じであれば、後の世は如何変じようか。
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