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「今日からこのクラスに転校してきた有蔵弦君で~す」
転校生を迎える時独特の静けさ漂う教室に、明るい声が響く。
「なんと、彼は3歳からアメリカで暮らしていた帰国子女です。みんな仲よくしてあげてね~」
若く、顔もわりと可愛らしい感じの女。今日から俺の担任。
生徒ウケがよく、性格も悪くはないんだろうが、クラスに入る前にやたら話しかけてきて面倒だった。
「マジで!?」
「すごーいカッコいい!!」
「男なのに帰国子女なの??」
挨拶を、と口を開こうとしたが、帰国子女という言葉で教室がざわつき、機会を失った。
たかが外国に住んでいただけでこの騒ぎ用……。こいつらはよっぽど暇なんだな。
クラスメイトの顔を一通り眺めながら、頭を切り替える。
始業式には、数日の差で間に合わなかった。編入の手続きに思いの外時間を要したからだ。
さんざ反対された挙句、父さんの妥協案すらも頑なに拒んだ結果がコレだ。
『毎日休まず学校に通うこと』俺の日本行きの最低条件だ。
一昨日NYを発って昨日の夕方日本に着いたばかりなのに、いきなり登校は辛い。
時差ボケで夜は全く眠れなかった。……眠い。
「はい、はい。皆静かに。質問は休み時間」
「「は~い!!」」
……なんだこの反応は!?
声揃えて間延びして、幼稚園児かよ。いきなり居心地悪いな。
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