転校生は帰国子女

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「ねえ、有蔵君!方向同じだし、あたしたちと一緒に帰ろうよ」 「あ~。転校の書類とかいろいろあって、職員室いかないといけないから」 「そっか。大変だね。また明日~」 俺に向かって手を振ってくる。 「あぁ。また明日」 笑顔で教室を出て行く女子AとB。 「あ……」 俺の右手が上がっていた。 ひょっとしたら笑っているのかもしれない。 「クク……」 何やってんだか。 口には出さなかったが、散々文句言ってきた癖に。 ちやほやされてまんざらでもない顔して、終いには手なんか振っちゃって。さっそく平和ボケに毒されたか? 学校が楽しい、とはこういう気持ちを言うのだろうか。 ……よくわからない。 職員室に用を済ませてから下駄箱に行くと、俺の外靴の上に紙が置いてあった。 ―体育館横の倉庫前に来い― 汚い字で書き殴られた、B5ノートを一枚破った紙。 日本の漫画で靴箱の中にラブレターを入れるシーンを見た事があるけど。……ないな。 だいたい転校初日だし。靴箱のもう一つのパターンだろう。
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