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「さて、ここからが本題だ。今回の試験内容について話しておこう」
「え?前と同じじゃないの?天力に書き物、伝令の三つ…」
天力は生まれながらに持つ私たちの能力。書き物は地上で言う学科試験の事。伝令とはマリア様直々に申し渡される難題。
主天使試験の時は、山奥に住む妖精の涙の雫を手に入れる事だったんだけど、すばしっこくて身体傷だらけになったし。
毎回この厳しい難題に、頭を悩ませている。
「今回は違うのよ」
「違うって?」
「これを見てちょうだい」
お母様が差し出したのは、地上の様子が映された水晶。
この水晶で私たち天界は、地上で日々何が起こっているのかを知る事が出来る。
疑問を抱きながらも、水晶に顔を近付けて見ると――…
「これ、誰?」
そこに映るのは見知らぬ男女。仲良さげに腕を絡め、街中を歩いている。
「名前は大崎 櫂浬。人間だ」
「にっ人間!人間が何!?」
「今回の特別試験内容。それは人間界に住むこの男、大崎 櫂浬の心を奪う事だそうだ」
驚きすぎて、息をするのも忘れてしまうほど。
この男の心を奪うことと、
今回の“神使い昇格試験”と、何か関係があるの?
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