ひとり

2/7
前へ
/7ページ
次へ
確か、明るい空だった。 小さなトンネルをぬけて、自転車とすれ違う。 薄黒く灰色の壁にかかれた大きいような小さいようなスプレーの落書きを横目に、私は小さな坂をあがる。 坂の上の木や 信号の青、赤の点滅。 向こうの通りを早足で過ぎていく人が1人。 その日私は この鮮やかな色の中で何を見ながら足を動かしていたのかは、まったく覚えていない。 左の小道から十字路に差し掛かる横断歩道の真ん中から50、もしくは30㎝ほどわきに、 小さな 「あなた」 はいた。 生き物の名称で分けると「猫」。 ...ただ、 これを書くにあたり、 「あなた」を、「もの」や「猫」と記すのは 何か違うと 私は思った。 おかしく思う方は 多々いると思うが、私はあなたを「あなた」と記したい。 稚拙な文章能力のため 私が文字に現せない 「何かが違う」の「何か」を なんとなくでも、感じることのできる方がいらっしゃればうれしいと思う。 私が、ふと「あなた」に気づいたのは.... 横断歩道の2、3メートル前だったろう。 一瞬、驚いて 足を止めた。 本当に一瞬だけ。 その1秒後には 自然と前へ進んでいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加