五月病

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 ブランコ。  すべり台。  ジャングルジム。  遊具の数は少なく、どれも塗装が剥げてぼろぼろ。おまけに、小さい子供用なのだろう、どれもサイズは小さめだ。  とはいえ、遊ぶつもりで来たのではない。ただ一人で時間が潰せれば、それでいいのだ。  僕は早足にブランコの所まで歩いていって、どかっと重い腰を下ろす。鎖の部分は冷たくて、ざらざらと錆の気持ち悪い感触が指先を這った。  ふう、と短いため息が漏れた。本来なら、今頃自分は学校にいなければならない時間だ。それなのに僕は、こんなところで一人、ぽつんと遊具に腰かけている。  どうして、こんなことになってしまったのだろう。  いや、本当は、そんなことはわかっている。単純な理由だ。ただちょっと、親と喧嘩しただけ。  大学を出て、公務員になりなさいと言う両親と、将来のビジョンなんて欠片もないのに、ありったけの反抗心だけを持った息子……つまり僕。  親に言われた通りに生きるのなんてまっぴらだ。自分の人生は自分で決める。  言葉を吐けば吐くほど熱くなって、泥沼で、わけがわからなくなって、どうしたらいいのか頭がめちゃくちゃになって、そんなやり取りが毎日続いて。  そして、僕は学校に行かなくなっていた。
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