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翌日。やっぱり少年は、いた。いつもの砂場で、スコップで穴を掘って遊んでいた。
今日こそは、この公園から立ち退いてもらわなければならない。僕は地面を踏み鳴らすように、彼のもとへと向かっていった。
「おい、お前」
僕はなるべくぶっきらぼうな口調で、彼に声をかけた。少年が振り返り、僕とばっちり目を合わせた。
じわり、と手の平に嫌な汗が滲む。だが僕は、構うもんかとますます拳を硬くした。
「あ、おにいちゃん」
少年は、目をぱちくりとさせて言う。
「また来てくれたんだね」
僕は、目眩がしそうな感覚に陥った。
また来てくれた……なんて、どの口が言うのだろう。この少年は、僕が公園に来るのを待っていたとでもいうのか。それではまるで、彼こそがこの公園の主で、僕はただの来客に過ぎないかのようではないか。
少年はおもむろに、自分が使っていたのとは別の、小さい青色のスコップを取り出して言った。
「ねえ、おにいちゃん。いっしょにあそぼ」
断ることはできた。何も言わずに逃げ出すこともできた。だけど僕はその時、彼の差し出したスコップを手に取って、黙ってその場に座り込んだ。
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